不幸にも自動車事故を経験し、その処理のために任意保険の保険金請求を行うと、翌年にはノンフリート等級が下がることは、広く一般に知られています。
また、人によっては不運が重なることもあるでしょう。つまり、数年のうちに複数回の事故に巻き込まれ、そのたびに任意保険を使ってしまった場合です。
1等級や2等級になると、特別に大きなデメリットがあることをご存知ですか。
それだけではないのです。
今回は、デメリット等級について詳しく紹介しながら、任意保険に加入する際の注意点やデメリット等級にならないためのポイントについて解説していきましょう。
もくじ
デメリット等級とは

初めて自動車任意保険に加入すると、多くの方は6or7等級からスタートすることになります。
それは、多くの保険会社で「セカンドカー割引」を導入しているからです。たとえば、新しく保険に加入を考えている方が「一人暮らし」だった場合には、6等級からのスタートが一般的でしょう。しかし同居の家族の中に、すでに自動車任意保険に加入されている方がいらっしゃる場合には、7等級からスタートできるという制度があるのです。(一人暮らしでも、今回の契約が同時に2台目以降の自動車保険契約の場合には、セカンドカー割引が適用されます。)
このことから、等級のスタートは6等級であると考えることができます。そして、無事故で1年間過ごした後に契約を更新すれば、毎年1等級ずつ上がっていき、それに応じて保険料の割引率が良くなっていきます。つまり、スタートの6等級よりも低い等級が割り当てられている方は、何かの原因によって等級が下がったと言えるわけです。
1等級とは

1等級の意味
デメリット等級の中でも、1等級や2等級は特別です。というのも、それらの等級になるには、契約初年度に複数回の保険金請求があったことを意味するからです。
ノンフリート等級は、1年間保険金請求がなければ翌年に1つ上がりますよね。逆に保険請求を1回すれば、翌年には3つ下がります。つまり、初年度6等級でスタートした方が1回の保険金請求をすれば、翌年の等級は3等級になりますよね。

そういうことです。1回目の事故は確率的には誰しも遭遇の可能性があります。でも連続の事故となると、それはその方のリスクといえるのです。
任意保険契約総数と年間保険金請求回数から計算すると、一般的に事故で保険金請求をする確率は約10%であり、しかも近年は減少傾向なのです。つまり、10年に1回以下というのが世の平均値といえそうです。
任意保険契約件数 | 任意保険支払件数 | 平均事故率 | |
2011年度 | 60,440,775件 | 5,424,019件 | 11.718% |
2016年度 | 61,708,915件 | 5,424,019件 | 8.789% |
1等級になるパターン
1等級2等級になる方とは「保険契約初年度に複数回の保険金請求をする方」と言いましたが、実はそれだけではありません。

単回の事故では3年経てば等級は戻ります。これなら最低でも3等級にしかなりませんよね。では事故を繰り返した場合はどうなるのでしょうか。
では、事故頻度ごとに複数回の事故に遭遇される方の等級推移について見てみましょう。

つまり、保険会社がリスクが高い契約者と認識する1等級2等級になるのは、
- 1年で複数回の保険金請求をされた方。
- 3年以内に複数回の保険金請求をされた方。
ということになるのです。
1等級のデメリット

1等級になると保険料はどうなる
これまでの話で、4年に1度程度事故に合うくらいでは2等級以下になることがない、ということが分かりました。
つまり、2等級以下の方は非常に事故率が高い、リスクの高い契約者ということになります。
では、デメリット等級の保険料の割引率を一覧で見てみましょう。
等級 | 無事故 | 事故あり |
10等級 | 44%割引 | 23%割引 |
9等級 | 42%割引 | 22%割引 |
8等級 | 40%割引 | 21%割引 |
7等級 | 29%割引 | 20%割引 |
6等級 | 19%割引 | |
5等級 | 13%割引 | |
4等級 | 2%割引 | |
3等級 | 12%増し | |
2等級 | 28%増し | |
1等級 | 64%増し |
そもそも上記の表を見る限り、保険契約者の多くが(ほとんどが)保険料の割引を受けていることが分かります。年齢にもよりますが、初めて契約された初心者の方でも割引を受けることは、めずらしいことではありません。
恐ろしいことに、1等級ともなれば「64%増し」です。年齢などの条件近い一般の契約者の倍以上の保険料になることも珍しくありません。
保険の契約引受拒否
現在の、または翌年の等級が1等級や2等級になることが決まっている方の保険申込みは、保険会社によっては制限がかけられるかもしれないのです。
自動車任意保険に加入する第一の目的は、大きな事故に遭遇し普通には支払えないような賠償金を請求された際に、経済的に助けてもらうところにあります。つまり、保険会社からしてみると、大きな金額の保険金請求があることは日常です。言い換えると、それらの保険金請求にきちんと応える義務があると言えますよね。
第二に、任意保険は事故被害者救済が大きな目的です。だって、大きな賠償金の支払いから契約者を守るということは、被害者が確実に賠償金を受け取れることに繋がっているのですよね。
これら2つの理由からに、リスクの高い契約者との保険契約には慎重さが求められます。
補償内容やその掛け金など、一般契約者よりも細かな条件を付ける必要があるのです。
このように、1等級や2等級の方はただ単純に保険料が割増になるだけでなく、補償内容や保険料の支払い方法、その他細かな条件までもいろいろと制限される可能性があるのです。
ただし、事故リスクが高い人ほど実際の事故の際に被害者を救済する必要があることになるので、対人対物賠償責任保険などの保険契約に加入できないといったことはほとんどないようです。
通販型自動車保険は、年間保険料が比較的割安になると好評です。ただし、そのためには基本的な手続きを自分自身で完結させる必要があります。
とはいえ、等級の低い方でも加入手続きができる場合もあります。ダメ元でも、一度ご自身で確認してみるとよいでしょう。
保険はもとを取るものではない

このように、保険金の請求回数が翌年以降の保険契約や年間保険料に大きな影響を与えることが分かりましたが、その判断材料となる「保険金請求回数」についてお話を進めていきましょう。
自動車事故にも、大小さまざまな規模や被害内容があることでしょう。小さな物損事故なら、お互いの被害金額合計が10万円程度で収まるかもしれません。それに対して大きな事故だと、複数人のけが人やそれ以上の人的被害の場合には、数億円に登る賠償金が必要になることもあります。
つまり、億単位の保険金請求をしても、数千円の金額を請求しても、どちらも「1回」とカウントされてしまうのです。
きっと、その考えが間違いの始まりなのです。
自動車保険を、
「自分が支払った保険料くらいは、いざという時に助けてもらう保険金で元を取らなきゃ損だわ。」
と考える方が意外に多いように感じますが、それは大きな間違いです。
保険は「非常に困っている少数の人を、多くの人で支える」ということが基本的な考えです。もし自分が困った時のために備えるものなのです。つまり「元を取る」どころか、一生涯保険金請求をしないことが本来の姿なのです。
不幸にも物損事故に遭遇して、修理代金が10万円ほど掛かったとしましょう。それを自分の財布から支払うことが平気だと思われる方は、余程のお金持さんかもしれません。
そんな時に「車両保険」を使いたくなる気持ちは理解できますが、当然それが「保険金請求回数、1回」とカウントされることを忘れないようにしてください。
ちなみに、「保険金請求回数」は言葉とおり、保険金を請求した回数です。決して事故の回数ではありません。
物損事故での車両修理費を、保険を使わず自分の財布から支払った場合には「回数」にカウントされることはありません。たとえ事故の際に保険会社へ事故の報告をしていても大丈夫なのです。あくまでも「保険金請求回数」が大切なのです。
デメリット等級からの回復方法

もし翌年から1等級や2等級になることが決まった場合にはどうすればよいのでしょう。
とは言っても、最低限の利用は必要ですよね。
じつは、自動車保険とはあなた個人に掛かっているものではありません。保険は車両に掛けているのです。つまり、あなたの事故回数によってあなたの車の保険料や補償内容が決まりますが、それはあなたの車を運転する時にのみ影響するのです。
もちろんレンタカーや友人・家族の車でも、壊した場合には損害を賠償する責任があります。しかし、レンタカーでの事故が自分の保険契約に影響することはありません。つまり、できるだけ自身の車を使用せず、レンタカーなどの利用を考慮することも大切なのです。(他車運転特約を利用する場合を除く)
究極の手段ですが、検討の価値はありそうですね。ただし、事故リスクが高い方が任意保険未加入のまま運転することはオススメできません。くれぐれも保険未加入期間にお車を利用されないように注意してください。
デメリット等級での保険料節約術

運悪くデメリット等級となってしまった場合には、今の保険会社以外の見積もりも取り寄せ、できるだけ条件のよい契約を探すようにしましょう。そもそも契約を引き受けてくれる保険会社はどこなのかを調べる必要がありますよね。
そんな場合には「一括見積もりサイト」が便利です。数ある保険会社ごとに見積もりを請求することは大変な手間です。まして、代理店型ともなればいちいち店舗まで出向く必要があるかもしれません。
気になる方は、下のバナーをクリックすれば「保険の窓口! インズウェブ」へジャンプします。利用に際して不安なことがあれば、実際に私が利用したときの感想をまとめていますので、こちらの記事を参考にしてください。
まとめ
デメリット等級についてまとめてきましたが、お役に立てたでしょうか。
結果的にデメリット等級になってしまった方は、なんとか等級を上げる努力をする必要があると思います。その方法は、「時間を掛ける」又は「1年間保険に入らず運転しない」ことしかありません。
その他の方は、できるだけ保険金請求をしないことがデメリット等級にならない方法です。決して「毎年支払っている保険料の元を取る」といった危険な考えは改めましょう。
一旦デメリット等級になってしまうと、そこからの回復はかなり大変だということを忘れてはいけません。