自動車保険とは、「自動車事故などが原因で、大きな賠償金やその他の出費が必要な方を、契約者全員で支える」ことを目的にしたものです。つまり、いざという時に助けてくれるありがたい存在なのですが、契約者全員が気軽に何度も保険金請求をしていては、すぐに破綻してしまいます。
自動車任意保険に初めて加入する時には、6等級もしくは7等級からスタートするというノンフリート割引制度。保険金請求がなければ、8等級、9等級と毎年等級が上がり保険料の割引率が高くなります。
逆に1等級~5等級は、俗に「デメリット等級」と呼ばれています。新規契約の方よりも割引率が低く、より割高な保険料の負担を求められるからです。
今回は不幸にも複数回の事故を経験し、等級が低くなった方のお話をしていきたいと思います。ノンフリート等級制度の仕組みについて詳しく知りたい方は、こちらの過去記事を御覧ください。
デメリット等級とは

保険の契約だけでなく世の多くの契約では、「新規」の方よりも「長年継続」されている方のほうが「より有利な内容で契約ができる」ことが一般的です。にもかかわらず、新規契約よりも割高な保険料を支払うのが「デメリット等級」ですよね。
基本的に1回保険金の請求をすると、翌年は3等級下がることになります。つまり5等級以下になるということは、新規契約から3年以内に1回以上の保険金請求を行ったことになります。
損害保険料率算出機構によると、2016年度の自動車任意保険契約件数はおよそ6,100万件。そして何かしらの保険金支払件数は約540万件。つまり、請求率はおよそ9%弱ということになります。
このことから、デメリット等級の方は一般平均よりも保険金請求回数が多い方、と言えるのかもしれません。
どの程度保険料が変わる?

では、割引率の一例を見てみましょう。これはある通販型損保会社での、実際の割引率一覧です。
等級 | 無事故 | 事故あり |
20等級 | 63%割引 | 44%割引 |
19等級 | 57%割引 | 42%割引 |
18等級 | 55%割引 | 40%割引 |
17等級 | 53%割引 | 38%割引 |
16等級 | 52%割引 | 36%割引 |
15等級 | 51%割引 | 33%割引 |
14等級 | 50%割引 | 31%割引 |
13等級 | 49%割引 | 29%割引 |
12等級 | 48%割引 | 27%割引 |
11等級 | 46%割引 | 25%割引 |
10等級 | 44%割引 | 23%割引 |
9等級 | 42%割引 | 22%割引 |
8等級 | 40%割引 | 21%割引 |
7等級 | 29%割引 | 20%割引 |
6等級 | 19%割引 | |
5等級 | 13%割引 | |
4等級 | 2%割引 | |
3等級 | 12%増し | |
2等級 | 28%増し | |
1等級 | 64%増し |
上記の表は継続契約の数値なので、新規契約時は6,7等級の割引率には下記表の数値が適用されます。
年齢条件 | 全年齢 | 21歳以上 | 26歳以上 | 30歳以上 |
7S等級 | 7A | 7B | 7C | 7E |
割引率 | 11%増し | 11%割引 | 40%割引 | 40%割引 |
6S等級 | 6A | 6B | 6C | 6E |
割引率 | 28%増し | 3%増し | 9%割引 | 9%割引 |
自動車任意保険は、新規契約時に限り過去の実績がないことを理由に、比較的高めの保険料が設定されています。(下段の表の通り)しかし、2年目以降はたとえ保険会社を別に切り替えたとしても上段の表の割引率が適用されることになります。
25歳以下の新規契約時の3%増しと比較しても極端に悪い条件とは言えないわね。
そうなのです。デメリット等級といえども4等級、5等級はそれほど大きな問題ではないでしょう。確かに割高にはなりますが、新規契約時に戻ったと思えば比較的受け入れやすい割引割増率と言えそうです。
問題はそれ以下の等級です。たとえば、3等級になるということは新規契約時から5年以内に2回以上の保険金請求を行ったことになります。先程の平均回数と比較すると4倍以上の事故率と言えますね。
割引率の低下は、もろに保険料の値上がりに直結します。例を見てみましょう。21歳~25歳の若者が新規契約するときの保険料試算です。(6B等級、免許証カラー ブルー、年間3,000km程度、日産ノート新車、車両保険あり、ソニー損保で見積もり)
もし、翌年の等級が3等級以下の場合には、更新時の保険料の概算を見てみましょう。計算しやすいように標準保険料を20万円にしています。
翌年等級 | 割増率 | 概算保険料 |
3等級 | 12%増し | 224,000円 |
2等級 | 28%増し | 256,000円 |
1等級 | 64%増し | 328,000円 |
もとに戻るには、どの程度の時間が必要か

たとえデメリット等級になったとしても、その後無事故を続けることで等級は復活していきます。単純に1等級の方が6等級に戻るには5年間無事故で保険金請求をしなければ、6年目には6等級つまりスタートラインに戻ることが可能ということです。
6等級で同時に新規契約された21歳の二人で比較してみましょう。一方が全くの無事故、もう一方が2回の事故で1等級になった場合の保険料の試算です。上記と同じ条件で標準年間保険料を20万円としています。
無事故の方 | 1,3年目に事故ありの方 | ||||||
年目 | 適用等級 | 割引率 | 保険料 | 適用等級 | 割引率 | 保険料 | 差額 |
初年度 | 6B | 3%増し | 200,600円 | 6B 事故 |
3%増し | 200,600円 | 0円 |
2年目 | 7 | 29%割引 | 142,000円 | 3 | 12%増し | 224,000円 | 82,000円 |
3年目 | 8 | 40%割引 | 120,000円 | 4 事故 |
2%割引 | 204,000円 | 84,000円 |
4年目 | 9 | 42%割引 | 116,000円 | 1 | 64%増し | 328,000円 | 212,000円 |
5年目 | 10 | 44%割引 | 112,000円 | 2 | 28%増し | 256,000円 | 144,000円 |
6年目 | 11 | 46%割引 | 108,000円 | 3 | 12%増し | 224,000円 | 116,000円 |
7年目 | 12 | 48%割引 | 104,000円 | 4 | 2%割引 | 204,000円 | 100,000円 |
8年目 | 13 | 49%割引 | 102,000円 | 5 | 13%割引 | 174,000円 | 72,000円 |
このように、新規契約直後に複数回の保険金請求を行った場合には、スタートラインの6等級に戻るのは9年目からということになります。相当に長い年月が必要ということがわかります。
等級をリセットするには

さて、一度下がった等級がもとに戻るには、かなりの時間が必要だということが分かりました。では、この期間を短くすることはできないのでしょうか。
たとえ1等級に下がったとしても、6等級にリセットする方法があれば、保険料の総支払金額で考えても大きなメリットになりますよね。
それは、1年間無保険でいることです。
実際に対象の車を運転されるのであれば、任意保険に入らないことは相当なリスクがあると言えるでしょう。しかも等級のリセットが目的であるのなら、過去数年の間に複数回の保険金請求を行った方、つまり事故回数が多い方の話です。つまり、無保険の期間に事故に合う確率が低くない方とも言えるからです。
理屈の上では簡単な話なのですが、実際に1年間車の運転をやめることは、その方の生活に大きな影響があるでしょう。とはいえ、もし交通事故で自分や他人に怪我をさせてしまうと、それこそ人生の一大事です。その償いに一生を掛けることにもなりかねません。
ちなみに、等級のリセット方法として下記の方法は必ずバレますので、絶対にやめておきましょう。
- 保険更新時に虚偽の報告をする。
- 保険更新時に、他の損保会社に切り替える。(かつ虚偽の報告をする)
- 新しいクルマを購入し、その保険を新規契約し、今の保険契約を解約する。
- 保険の名義変更をする。
- 身内や他人に新規契約してもらい、今の契約を解約し保険を切り替える。
一旦保険会社から保険の解除を受けた方は、他の損保会社でも再び同種の保険を引き受けてもらえなくなりますので、相当リスクの高い行為であると認識したほうが良いでしょう。
無保険で運転するリスク

等級をリセットする唯一の方法として「14ヶ月の間(13ヶ月以上)無保険でいること」と紹介しましたが、その期間は絶対に対象車両の運転をしないことをオススメします。
これは、任意保険に加入しなかったあなたのためではなく、無保険車との事故による被害者のためという意味合いが強くなります。
交通事故で、けが人の治療費や壊した物の修理費用は、その過失割合にお応じて事故の当事者同士が費用を負担します。その時に話し合いや交渉を行うことも任意保険の大切な役割なのです。
つまり任意保険未加入で事故を起こした場合には、事故相手に多大な迷惑をかけてしまうことに繋がります。
被害者は、事故処理において「相手の誠意」を重要視します。もしあなたの過失割合が大きい場合に、あなたが任意保険に未加入のせいで示談交渉が遅れるようなことになると…。まとまる話もまとまりません。
それを防ぐためには、事故処理にあなたは相当の自己犠牲を強いられることになるでしょう。
しかし、いくら気をつけていても細かな事故が避けられない時もあります。そのような場合でも、きちんと自賠責保険に加入しているのであれば、支払不能なほどの賠償請求を受ける可能性はそれほど高くはありません。
ただし、怪我の度合いや壊れたものによっては100万円を超える請求に応じる必要が出てくるかもしれません。(この程度の金額なら、一般サラリーマンでも10年程度の期間で考えれば、支払不能とは言えません。)
近年では、レンタカーなども借りやすくなっており、またカーシェアやタクシーの利用についても、かなり手軽になった印象です。無保険の車を毎日の通勤や仕事に使うことは論外として、休日やたまのレジャー利用なら、それらを利用することを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
自動車任意保険の「デメリット等級」についてまとめてきましたがいかがでしたか。
平均的な事故頻度とは、10年に1度程度というのが世間の基準であり、それを超える場合には「デメリット等級」になってしまう可能性が高いということでした。
また「デメリット等級」になると、その後10年以上の期間に渡って割増保険料が適用されることで、無事故の方との比較では保険料の支払いが最大100万円近くも増えてしまうことも分かりました。
「デメリット等級」をリセットする方法は、1年間(13ヶ月以上)任意保険に入らないことで可能であるということでした。
そして、任意保険に未加入の期間はできるだけ、というか絶対に対象車両を運転しないことが重要であることも分かりましたよね。
ぜひ参考にしてください。