毎年、自動車保険の更新時期になると、その大きな出費に悩む方は多いと思います。少しでも保険料を節約しようかと、保険料が割安と噂の『通販型自動車保険』を検討してみても、数ある保険会社ごとに比較するべきポイントってわかりにくいですよね。
そんな悩みをお持ちの方のために、この記事では通販型自動車保険各社が提供しているサービスの中で、人気の高い5つの内容について詳しく解説し、各社の対応状況について比べてみました。
重要な比較ポイント5選

1-1 メガ損保グループ、外資系、金融系
自動車保険とは、事故の際に発生する「相手方への多額の賠償費用」について保険をかけるものです。
事故の内容にもよりますが、最近では1億円を超えるような超高額の賠償が必要になるケースが増えてきています。
自動車保険の場合、自然災害による被害の一部は保険金支払の対象に含まれない場合があります。しかし一部の外資系損保には、地震や津波による被害の場合でも補償するといった内容の車両保険が存在します。また、多くの損保会社で大雨や台風、高潮による被害が車両保険の対象に含まれています。
このような自然災害による被害は、たくさんの被害者が同時に発生することが特徴で、当然保険会社としても、まとまった額の保険金支払いが必要になると言えそうです。
自動車保険ではありませんが、東北の地震の際に支払われた地震保険の総額は1兆2000億円だったそうです。すごい金額ですよね。(日本損害保険協会発表)
通販型の損保会社には、そんな保険金支払いの体力は期待できないでしょう。
通販型の損保会社自身も、そんな大きな支払いを支えられないことが分かっているということです。というか、そもそも外資系2社以外の通販型損保では、地震特約の取扱いすらありません。このことは、事業規模の小さい通販型損保では、「保険金の支払いに問題が絶対に発生しない」とは言い切れない、一つの例だと言えそうです。
ちなみに2017年実績で業界大手の損保ジャパン日本興亜の正味収入保険料は2兆円を超える規模です。(自動車保険以外も含む)それに対して通販型最大手のソニー損保でおよそ1000億円。その他の中堅通販型損保では300~500億円程度しかありません。
ということは、全ての通販型の自動車保険が保険金支払いに問題があるということになるのでしょうか。
ということは、外資系はそうではないの?
もちろん外資系の損保会社も、世界有数の保険会社が後ろについています。しかし・・・。
撤退を決めた原因は色々あるのでここでは割愛しますが、外資系の損保会社は破綻しなくても、突然撤退する可能性があるということです。
ただし、契約者が切り捨てられたわけでなく、きちんと契約は引き継がれました。保険契約者が大きな不利益を受けたわけではありませんのでご安心ください。

1-2 「ロードサービス」の扱い
最近の自動車保険には、その殆どに無料のロードサービスがついています。
事故や故障の際に、事故車両を修理工場まで運ぶ必要がある時など大変役に立つサービスだと好評のようです。
気になるのは、各社セールスポイントとしてロードサービスの内容を競うようになったために、毎年のようにその内容が変更されていることです。
たとえロードサービス内容が気に入ってある損保会社を選んだとしても、契約途中で内容が変更されてしまうこともあるということです。
すなわち、内容が充実したロードサービスを無料で提供しているということは、その分契約者一人ひとりが負担する費用も割高になるといえるのです。
すなわち、本当に自分にとって必要なサービスなのか、過剰すぎないかなども気にする必要があるのかもしれません。まぁ、年間保険料の見積もりやご自身の予算次第と言えそうですね。

1-3 「事故現場駆けつけサービス」の扱い
いくつかの通販型損保会社では、事故の際に警備会社のスタッフが現場に駆けつけてくれるサービスを提供しています。
ほとんどの契約者にとって、事故現場の経験がないか、あったとしてもごく少数の経験しかないために、「事故対応がきちんとできるか不安」と思う方は非常に多く、たいへん人気のあるサービスとなっています。
このあたりの情報がはっきりと伝わっていないようなので、ここでポイントをまとめてみたいと思います。
そもそも、「現場駆けつけサービス」とはどんなものなのでしょうか。
例として、イーデザイン損保が提供している「セコム事故現場急行サービス」について見ていきます。ちなみに、他の損保会社が提供しているサービスもほとんど同じ内容です。
- 全ての契約に無料でセットされているサービスです。
- サービスを利用しても、追加の費用は発生しません。
- 24時間365日利用可能です。
- 連絡を受けたセコムの緊急対処員がいち早く現場へ駆けつけ、契約者をサポートします。
現場で対処員が行うサポートの内容
- 救急車の手配(終わっていない場合のみ)
- 警察への連絡(終わっていない場合のみ)
- レッカーやタクシーの手配
- 事故状況や困っている事についてのヒアリング
- 事故相手や目撃者からのヒアリング
- 事故現場や車両の写真撮影
現場で行わない内容
- 保険金請求に関する手続きや手配
- 示談交渉や事故の過失割合についての見解の表明
- 救急車への同乗
- 金銭の立替
- 事故車両の移動や修理の手伝い
- 事故現場での交通誘導
- 高速道路(有料道路含む)上でのサービス提供
- 緊急対処員は、事故現場到着後、概ね 15 分を経過した時点で、原則、事故現場を離脱するものとします。
完全にお任せとは違うようね。
自動車保険を契約される旦那様だけでなく、奥様が当該車両を運転中の事故でも利用できることが、このサービスを重視される方の最大のポイントになっているようです。ただし、完全に「全てお任せ」ではなく、あくまでもご自身で対処される際の「サポート」であることを忘れないようにする必要がありそうです。

1-4 「新規・更新時ネット申し込み割引」の内容は
「ネット申し込みなら1万円割引!」
こんなフレーズをテレビのCMでよく耳にしますよね。
実際、ほとんどの通販型自動車保険への新規申し込みの際に、この割引が受けられるようです。
どうせなら割引金額が大きい保険会社を選ぶほうが得と感じるかもしれませんが、他にも気をつけるべきポイントがあります。
新規契約時でも更新契約時でも、多くの通販型損保会社は「インターネット割引」を実施しています。この2つの割引内容に差があると大きな問題が発生するのです。
これは大きな問題です。いくら沢山の見積もりを検討して保険会社を選んだとしても、2年目に大幅な保険料値上げが待っているとすると意味がなくなってしまいます。だってそうでしょう。誰だって1年間無事故で更新を迎えれば、せめて前年よりは保険料が下がることを期待しますよね。

1-5 「個人賠償特約」の扱い
近年は、自動車事故だけではなく日常生活において、いろいろなリスクに備える必要があると言われています。
例えば、お子さんが自転車で通行人とぶつかって相手に怪我をさせてしまった場合や、不注意で他人の持ち物を壊してしまい弁償しなければならなくなったような時です。
もともと自動車保険がメインであるため、特約として設定されている「個人賠償特約」の補償内容は少し貧弱な印象を受けるかもしれません。しかし、補償金額が無制限であるなど、いざという時にはしっかりと役立つ内容であるものも沢山存在します。
少しでもその手間を減らせば、最悪の場合「更新手続き忘れ」による補償を受けられないような事態を防ぐことにもなるのです。
個人賠償責任保険は、多くの場合それほど保険料が高いものではありません。年間数千円程度であることが多いですよね。その契約手続きを自動車保険と一緒にまとめられるメリットは意外と大きいのではないでしょうか。
通販型損保各社を比較ポイントごとに分類

2-1 メガ損保グループ、外資系、金融系
日本の損害保険会社は、大きく分けて4つのメガ損保グループと、外資系、それに金融系に分かれています。一覧で見てみましょう。
通販型自動車保険を販売する損保会社の一覧です。(除くセコム損保)
会社名 | グループ | 正味収入保険料 (自動車保険以外含) | 設立時期 |
ソニー損保 | 金融系 | 955億円 | 1998年設立 |
チューリッヒ | 外資系 | 840億円 | 1872年設立のスイスの保険会社 日本法人は1998年設立 |
アクサダイレクト | 外資系 | 514億円 | 1816年設立のフランスの会社 日本法人は1998年設立 |
三井ダイレクト | MS&AD HD | 376億円 | 1999年設立 |
セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険) | SOMPO HD | 332億円 | 2011年に「おとなの自動車保険」を販売開始 |
イーデザイン損保 | 東京海上グループ | 257億円 | 2009年設立 |
S B I 損保 | 金融系 | 231億円 | 2006年設立 |
そんぽ24 | SOMPO HD | 133億円 | 2000年設立 元々は 日本興亜 の傘下だが、2014年 損保ジャパン と合併 |
① 金融系とは
ソニー損保は、ソニーフィナンシャルホールディングスの一員であり、S B I 損保はかつてはソフトバンクグループの金融関連企業として設立され、現在では同グループを完全に離れているものの、ネット証券最大手としての地位を築いています。
共に日本の企業であり、ソニーやソフトバンクという日本有数の巨大企業グループとつながりを持つために、資金や経営に不安があるわけではありません。
しかし保険会社系列の損保とは違い、もともとは金融グループであり、かつ設立されてからの歴史も比較的浅いことから、保険のノウハウ不足や事故対応に対する体制が比較的弱いのではないかという印象を持たれることもあるようです。
② 外資系とは
チューリッヒは、スイスに本社を構え世界中で保険を販売する巨大企業です。年間収入保険料は軽く5兆円を超える規模になります。
アクサはもっと巨大であり、世界最大の保険グループと言われています。なんと、年間総売上は12兆円を超える規模であるとか。
③ メガ損保とは
日本の損害保険各社は、提携や合併を繰り返し業界の再編が進んできました。
その結果、上記金融系のソニー損保やSBI損保など一部の損保会社を除き、その殆どが「3つの巨大損保グループ」に再編されることになりました。これらのグループは「メガ損保」と呼ばれ、3つのメガ損保に属する保険会社だけで、日本の損害保険全体の約9割を占めるほどです。
① MS&ADインシュアランス グループ
日本における自動車保険契約数No.1を誇る巨大保険グループです。

② SOMPOグループ
2017年度利益予想が2,000億円に迫る巨大保険グループです。国内損保事業を中心に、国内生保事業、介護・ヘルスケア事業、海外保険事業を行う企業の集合体です。

③ 東京海上グループ
東京海上グループは、東京海上HDならびに世界に展開する子会社245社および関連32社により構成される、国内損保・生保、海外保険事業、金融・一般事業を展開する巨大グループです。(2017年3月現在)


2-2 ロードサービスを比較
① 無料レッカー牽引距離
会社名 | 指定工場まで | 契約者指定場所まで |
ソニー損保 | 無制限 | 150kmまで無料 |
チューリッヒ | 無制限 | 100kmまで無料 |
アクサダイレクト | 無制限 | 35kmまで無料 |
三井ダイレクト | 無制限 | 50kmまで無料(JAF会員なら65km) |
セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険) | 無制限 | 現場処置を合わせて15万円まで(全てを運搬費用に当てた場合およそ300kmに相当) |
イーデザイン損保 | 無制限 | 60kmまで無料 |
S B I 損保 | 無制限 | 50kmまで無料(プレミアムなら150kmまで無料) |
そんぽ24 | 無制限 | 100kmまで無料 |
しかしソニー損保によると、サービスを利用される方の9割以上が50km以内の利用だそうで、あまりこの数字にこだわる必要はなさそうです。
② トラブル時の宿泊費の負担
会社名 | 帰宅費用 | 宿泊費用 |
ソニー損保 | 全員を限度額なしに実費をサポート | 全員を限度額なしに実費をサポート(ビジネスホテルクラス) |
チューリッヒ | 全員を限度額なしに実費をサポート | 全員を限度額なしに実費をサポート(ビジネスホテルクラス) |
アクサダイレクト | 全員を限度額なしに実費をサポート | 全員を限度額なしに実費をサポート ※帰宅費用と宿泊費用はどちらか一方のみの利用となります。 |
三井ダイレクト | なし | なし |
セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険) | 一人に付き1万円限度 | 一人に付き2万円限度 |
イーデザイン損保 | なし | なし |
S B I 損保 | 全員を限度額なしに実費をサポート | 一人に付15,000円限度(プレミアムなら2泊までサポート) |
そんぽ24 | 全員を限度額なしに実費をサポート | 全員を限度額なしに実費をサポート(ビジネスホテルクラス) |
③ ロードサービス付帯の条件
会社名 | 付帯条件 | その他 |
ソニー損保 | 契約者全員に無料で付帯 | |
チューリッヒ | 契約者全員に無料で付帯 | |
アクサダイレクト | 契約者全員に無料で付帯 | |
三井ダイレクト | 契約者全員に無料で付帯 | |
セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険) | オプション有料設定 申し込み者のみ利用可能 | |
イーデザイン損保 | 契約者全員に無料で付帯 | |
S B I 損保 | 契約者全員に無料で付帯 | 条件を満たせばプレミアムサービスを受けることが可能 |
そんぽ24 | 契約者全員に無料で付帯 |


2-3 「事故現場駆けつけサービス」を比較
以前は「現場駆け付けサービス」は、通販型自動車保険独自のサービスでした。現在では、損保ジャパン日本興亜でもサービスが始まり今後ますます広がって欲しいものです。しかし、警備会社も人員に限りがあるためこれ以上の提携は難しいのかもしれません。(損保ジャパン日本興亜では有料サービスです。)
代理店型の損保でもこのサービスを開始したと言うことは、代理店型の「担当者が駆けつけてくれる」という安心感が、過去のものになったということを表しているとも言えそうです。
では、通販型の損保会社でこのサービスを提供しているのはどこでしょうか。
会社名 | サービスの提供 | 費用 | 駆けつける警備会社 |
ソニー損保 | ○ | 無料 | セコム |
チューリッヒ | |||
アクサダイレクト | |||
三井ダイレクト | |||
セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険) | ○ | 無料 | ALSOK |
イーデザイン損保 | ○ | 無料 | セコム |
S B I 損保 | |||
そんぽ24 |

2-4 「ネット申し込み割引」の内容は
ネット割引の金額も重要ですが、それよりも更新時の割引が新規契約時と同程度あるかという点に注目して見ましょう。
保険会社名 | 新規インターネット割引 | 更新時インターネット割引 |
ソニー損保 | 一律10,000円 | 一律2,000円 |
チューリッヒ | 最大10,000円 | 1回目最大5,000円 2回目以降一律1,500円 |
アクサダイレクト | 最大20,000円(2018年7月以降) | 一律1,000円 |
三井ダイレクト | 最大10,000円 | 一律3,000円 |
おとなの自動車保険 | 一律10,000円 | 一律10,000円 |
イーデザイン損保 | 一律10,000円 | 一律10,000円 |
S B I 損保 | 一律10,000円 | 一律10,000円 |
そんぽ24 | 10%割引 | 7%割引 |

2-5 個人賠償特約とは
昔から、個人賠償責任保険は自動車保険とセットで加入されている方が多いと思います。それが通販型に切り替えることで、特約として設定がないとなると、別途それなりの保険に加入する必要が出てきます。
自転車事故でも多額の賠償金支払いを命じる判決が出るなど、個人賠償責任保険の必要性はますます高まっているなかで、別に契約をしなければならない手間はちょっと面倒だと感じてしまいそうです。
では、各社の対応状況を一覧で確認してみましょう。
保険会社名 | 補償の名称 | 限度額 |
ソニー損保 | 個人賠償特約 | 1事故につき1億円まで(示談交渉付き) |
チューリッヒ | 個人賠償責任補償特約 | 1億円、5,000万円、3,000万円の3つのプランから選択可能 |
アクサダイレクト | 日常生活賠償責任保険特約 | 3,000万円限度 アクサ安心プラスとして抱合せ販売(示談交渉付き) |
三井ダイレクト | なし | |
おとなの自動車保険 | 個人賠償責任特約 | 保証額は無制限(示談交渉付き) |
イーデザイン損保 | なし | |
S B I 損保 | 個人賠償責任危険補償特約 | 1事故につき1億円まで(示談交渉付き) |
そんぽ24 | 個人賠償責任特約 | 保証額は無制限(示談交渉付き) |
まとめ
保険料の見積もりは、契約者の条件によって大きく変動します。どこの損保会社が安くなるかは見積もり結果を見ないとわからないでしょう。
しかし、いくら保険料が安くても必要なサービスや補償がなければ意味がありません。逆に考えれば、多少高くなっても付けたいサービスや補償があるとも言えるのかもしれません。
自動車保険の切り替えを考えるにあたり、上記の5つのポイントについて、しっかりと比較される事をおすすめします。もちろん見積もり結果も重要ですがね。