通販型自動車保険に関わらず、事故の多い人は自動車保険の加入を断られることがあると言われています。
少し前なら「そんな時でも代理店型なら担当者次第でなんとかしてくれる」とも言われていたのですが、最近ではそれもなかなか厳しいようです。
事故で保険を使うと翌年にはノンフリート等級が3等級下がる。と言う事は有名ですが、実際にはどのようなペナルティーがあるのか、3等級ダウンとはどの程度の影響があるのか、この辺りがよくわからないと言った声が聞かれます。
そこで、事故で保険を使うことによるペナルティーと、事故を経験した際にどのように保険と付き合うべきかと言うことをまとめてみたいと思います。
もくじ
ノンフリート等級制度とは
自動車保険に加入している人は、その補償に対して保険料を支払っています。その結果、事故で多額の賠償金を請求された時、保険に助けてもらうことができるのです。
これがノンフリート割引制度でしたよね。詳しくは下記リンクをご覧ください。
保険会社は1回目の事故に対しては寛容である
例えば死亡事故の賠償金として1億円の任意保険の保険金支払いがあったとしましょう。
損保会社が1億円の保険金を支払うために、どれだけの人から保険料を集める必要があるのでしょうか。
契約者一人が年間10万円保険料を支払っているとすると、
1億円 ÷ 10万円/人 = 1,000人
と計算できます。一人の事故を1,000人で支えるわけですね。
しかし、保険本来の目的は事故の際に経済的に助けてもらうことでした。それなのにいざという時に助けてくれないようでは、そんな保険会社は必要ないですよね。
具体的な例を見てみましょう。
事故を起こすと等級が3等級下がるのでしたよね。それでは3等級下がった結果どの程度割引が減るのでしょうか。
実際の割引率をみてみましょう。
等級 | 事故なし | 事故あり |
10等級 | 44%割引 | 23%割引 |
9等級 | 42%割引 | 22%割引 |
8等級 | 40%割引 | 21%割引 |
7等級 | 29%割引 | 20%割引 |
6等級 | 19%割引 | |
5等級 | 13%割引 | |
4等級 | 2%割引 |
これは、実際に使われてる割引率の一覧表です。ただし割引の数字は保険会社によって微妙に違いがあります。
その通りです。今年は10等級だったので割引率は44%引きでした。翌年はどうなりますか?
44% − 20% = 24% と言うことですね。
すなわち、翌年の保険料は2割とちょっと値上がりするわけです。
同じことを9等級や8等級の方に当てはめても、25%前後の値上がりということは同じです。
この事から見ても、事故をで保険を使ったからと言って極端な制裁を受けるわけではないことがわかります。ただし、3年間は事故あり係数が続きますので割引は1%づつしか増えないのですが。
確かに年間に2〜3万円の負担増は痛いですが、相手の治療費や修理代など請求した保険金の金額を考えると、十分に保険に助けられているわけですからね。
保険の加入や更新を断られるパターン
例えば6等級や7等級の若者が1年に2回の事故で保険を使ったとすると、翌年は1等級以下となります。
このように、1回目の事故による保険金の支払いは、その後3年間の保険料でペナルティーを受けることで帳消しとなりますが、連続事故で保険を使うとなると相当のペナルティーを受ける覚悟が必要となります。
現実に保険に加入することができずに、無保険状態で運転されている方はかなりの数存在しているようです。
任意保険に関するデータを見てみましょう。
対人賠償 | 対物賠償 | 搭乗者傷害 | 人身傷害 | 車両保険 | |
普及率 | 74.1% | 74.2% | 29.3% | 68.0% | 43.5% |
2016年3月末現在:損害保険料率算出機構
実に4台に1台は任意保険に加入していないと言う結果です。交差点で止まってい時に、前後左右のどれか1台は無保険かもしれないのです。
その全てが連続事故により保険契約を断られたことが原因ではないかもしれません。ですが、任意保険に加入を断られた「保険難民」が増えているのは事実です。
保険の加入を断られたらどうすればよいのか
等級が低すぎる事で、保険会社に加入を断られた場合でも、諦めずにいろいろな代理店に相談してみましょう。条件を厳しくする事で引き受けてもらえることがあります。
それでも見つからなかった場合は、なるべく車の運転を辞めることを検討してください。無保険状態ではもし事故があった時に、事故被害者に多大なる迷惑をかけてしまいます。
そうしないと、等級が下がった人が更新時に1週間だけ運転を我慢すれば6等級に戻ることになるからです。
事故の際には保険を使うかどうか熟慮しましょう。
このように、保険金の請求をすると等級が3つ下がる事と、年に複数回の保険金請求を行なったり1等級まで下がってしまうと、保険の契約すらできなくなることがわかりました。
そのことを考慮して事故の際に、保険金を請求するか自腹で払うかの判断は重要となります。
意外と勘違いされている方が多いのですが、事故の回数でノンフリート等級が上がり下がりするのではありません。あくまでも保険金請求の回数で決まるのです。
自損事故などで自分の車が破損した時には、修理代金が10万円前後であれば保険を使わずに自腹で修理するという選択肢があるのです。もちろん相手がいる事故でも金額次第では自腹もありです。
保険に毎年高い保険料を払っておきながら、事故の際に安くもない金額を自腹で払うのは少し抵抗があるかもしれません。
しかし、そもそも任意保険とは自賠責で賄いきれない賠償金を補ってくれるというものです。手に負えない金額以外の事故であれば自腹で対応した方が、その後の保険料の上昇分を加味すると意外と得である場合が多いのです。あくまでも金額次第ですね。
どの程度の金額が自腹の限度なのか考えておこう
実際には、どんな条件を考慮するば良いのでしょうか。
- 等級が下がる3年間の割り増し分
- イーデザイン損保なら、無事故割1年分
- 車両保険などの免責分
だいたいこれらの金額を合計した額を目安にすれば良いでしょう。
まとめ
事故件数の多いドライバーは、通販型には断られるよ、といった話を聞くことがありますが、これは通販型自動車保険だけの話ではありません。
代理店型とはいえムリなものはムリなのです。ただし、契約内容に自由度が高い代理店型なら、補償内容の限定や免責金額の設定など、細かな設定をすることでなんとか契約につながることもあると言う程度の違いなのです。どっちにしても事故の多いドライバーは嫌われるのです。
また、毎年の保険料を考えると、事故の際にたっぷり保険を使ってやろうとか、ロードサービスで元を取らなきゃ、などと考えてしまいがちです。その気持ちは私もよくわかります。
ですが、実際には多額の賠償金を請求されるような事故に遭遇した時にこそ役に立つのが任意保険の役割です。保険の加入者がお互いを支えあう必要があるのです。契約者皆が元をとるのであれば、保険が成立しません。
でも、損はしたくないですよね。だって、そのために保険料が安い通販型への切り替えを検討されているのですから。
そんな中、保険を使わずに自腹で修理代を払う話は、少し抵抗があることはわかります。ですが、最近の自動車保険は通販型や代理店型に関わらず、事故の少ない契約者の囲い込みをする一方で、事故を起こす契約者には結構冷たい対応になる傾向があります。
2000年代に各損保会社は、少子化や若者の車離れ、高齢者の事故増加、消費税の増税など様々な原因でなかかな利益が出ない時代がありました。2010年代後半に自動ブレーキなど技術の進歩で事故が減少し、保険会社もほっと一息というところで、やはり保険金の支払いはできるだけ抑えたい、そのための努力の方向性として事故の多いドライバーの排除となりがちなのです。
運悪く、間をおかずに事故に遭遇することがないわけではありません。そんな時に保険金を請求するのか、自腹をきるのかを考えるのはとても重要だと思います。
保険に加入してから全くの無事故であったとしても、20等級に到達するには14年もの時間が必要です。しかし一旦20等級にまで上り詰めると、通販型の自動車保険でかつ国産の大衆車であれば、年間保険料は車両保険をつけても3〜4万円程度です。若い方からすると羨ましい金額でしょう。
それなら、事故のたびに保険金を請求することで3年ずつ足踏みをするよりも、多少自腹で払ったとしても、早く20等級に到達した方がお得かもしれません。
これなら、1,000人に1人が事故で億単位の賠償金を請求されたとしても、保険が成り立つわけです。いつ自分が1,000人に1人の加害者になるかもしれないのですから。
連続で保険金を請求することによって任意保険の加入を断られるような事態にならないように十分注意しましょう。